感想

友達いらない同盟

名作
ブコフの100円棚でタイトルに惹かれて手に取り、そのまま立ち読みで読了してしまい購入。
2018年が始まってわずか半月で俺的ベストオブラノベ2018が決定してしまった。
・主人公
この主人公は関わりたくないタイプだなと思う一方で、俺が憧れるタイプの強い信念を持っているキャラだ。
俺に、少しの頭の良さと、少しのコミュニケーション能力と、少しのトゲトゲしさと、信念に基づく強い意志を加えると、こんな感じかなあ。つまり、俺自身が自覚している俺の好きなところと嫌いなところとをぎゅっと濃縮した感じ。
だから、ちょっとした台詞にもいちいち感じ入るものがあって、物語にはあっという間に引き込まれていってしまった。
・P179~200
もちろん、作品全体を通しての一番のクライマックスは最後の最後にあるわけだけど、物語中盤のこのシーンが、もう1つの静かな山場であるように思う。
この場面でなされている会話の内容も衝撃はあるけれど、それよりも、二人が自らの感情/思考を相手に伝えるために、必死に丁寧に言葉を紡いでいる感じがすごく好き。
・クライマックス
俺はこのクライマックスが非常に好きだ。
その理由はいろいろあるのだが、1つ大きなものは、説得が完全に理詰めでなされている点にあると思う。
およそ半年ほど前、俺は次のような趣旨のツイートをした:
「俺は基本的に説得というものを理詰めでしか理解できないので、フィクションにおける説得シーンはお約束として受け入れるしかないみたいなところがある。『俺が説得される側の立場だったとして、この言葉で説得されうるか』『俺が説得する側の立場だったとして、この言葉を生み出しうるか』、このどちらもが否と感じることが多い」
それに対し、この作品のこのシーンはどうか。
「俺が説得される側の立場だったとして、この言葉で説得されるか」「俺が説得する側の立場だったとして、この言葉を生み出し得るか」、どちらにも力強くYESと答えることができる、少なくとも俺にとっては非常に説得力のある説得シーンだ。
・説得パート
2つほど言及しておきたい。
1つ目。主人公の""友達""の定義を思い出して欲しい――「こいつになら、まあ、殺されても仕方ない。そう思える相手」。
つまり、このラインを越えて、澄田が主人公にとっての""友達""になったことを表す場面でもあるのだ(P170の時点では「微妙なとこ」と答えていたことを思い出して欲しい)。
2つ目。この最後の説得方法は、P236からの去年の回想シーンにおいてスベテが大輔を説得する方法そのものだということだ。
つまり、「主人公が、かつて自らが救われた方法で、他者を救う」というシーンなのだ(""救う""という言葉の使い方が適切かはさておき)。主人公に対するスベテの影響の大きさが窺えるものでもある。
また、そのような対比があることを踏まえると、澄田を指して去年の大輔だというP154でのスベテの評は示唆的だと思う(当時の主人公がどういう心境で居たのかP201からに描写がある)

いろんなことが詰め込まれていて、いろんなことが読み取れる場面だ。クライマックスに相応しい、見事な展開だと思う。
・後半
クライマックスであるP320までが、P200から遠く感じた。
球技大会には「澄田の行動のトリガーを引く」「主人公とスベテの対決」といった役割があるし、悠希の存在には「主人公の過去の描写」「学校外での主人公の人間関係の描写(澄田への追い打ち)」といった役割があることはわかるのだが、それでもP200まででかなり盛りあがっていたため、やや間延びした印象を受けた。
・理性
P165「これは理性でねじ伏せないとな、と自分に言い聞かせてみた。それは簡単なことのように思えた」
という描写から明らかなように、主人公は意図的に感情を理性でねじ伏せて生きているように思う。己の主張につねに正当性を持たせるために必要なことの1つとして。他の例としてはP83などがある(追記部分で引用)。
物語本編において心理描写が少ないのは、おそらくこれに基づく意図的な演出であろうと思われる。
これは再読で気づいたのだが、だからこそP262の「これは一体どういう感情だ?」という描写が光る。
・ミステリ的仕掛け
P212で明かされる、小ネタとしてのミステリ的仕掛けがあるのだけど、これはフェアではないよね?(看破するに足るだけの情報が読者には与えられていないよね?)
まあ別にミステリではないし、本質的な部分でもないし、さらに言えば巻頭カラーイラストで半ばネタバレされている(!!)ので、どうでもいいことではあるけれど、P52「女の子には話しづらいこととかあるんじゃないか?」などがミスリードとして意図されているにもかかわらず、伏線の方が見当たらないのはアンバランスかなと思った。(俺が見逃してるだけだったらごめんなさい)
(メタ的には「悠希の一人称が一度も登場していない」という伏線があるが)
(2018/05/24追記)P103「というか悠希君って、なんだよそれ」あたりが伏線といえば伏線だ


以下引用。好きなやり取りが多すぎて、これでもかなりしぼったつもりなのだが、まだまだ多い。
順不同だけど、概ね好きな順

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フェネック考

8章以降に関しては以前やったが、ここでは前半について議論したいと思う。
こうして並べてみるとよく分かるのだが、フェネックはかなり賢い。常にサーバル達の1歩先を行っている。

====引用ここから====
5章エピローグ
フェネック「どっちにしろ、勘違いは収まったけど アライさんとサーバルたちじゃ、セーバルへの対応が違くなるから一緒に行けないしねー」
トキ「セーバルへの対応が変わる?」
フェネック「キミたちは、セーバルを敵だと認識してない。あるいは……認識できなくなってきてる。でも、アライさんは違うからねー」
シロサイ「…………」
フェネック「ま、気になることもあるしねー。別々に追って、早いもの勝ちってことでー。またねー」

6章15話
フェネック「サーバルはセーバルに何を奪われたんだろう、って」
サーバル「私が……セーバルに……?」
フェネック「そう。セーバルはサーバルから『何か』を奪ったからあの姿になったんだよ。何か、大切なものを、ね」
サーバル「なんだろう?? うう、わからないよぅ」
フェネック「やー、ごめん、色々言ったけど 結局、私には何一つわかってないからなー」
====引用ここまで====


「セルリアンは『輝き』を奪う」という話が初めてなされるのは5章7話11話でのミライさんによるセルリアン講座の中でだが、ギンギツネもこの話はしているし、言葉の定義はさておき、現象自体はアニマルガール達にもよくしられたものだと考えるのが妥当だろう。
そうすると、5章エピローグの「気になること」とは6章15話の「サーバルはセーバルに何を奪われたんだろう」のことだろう。つまりフェネックはいち早くサーバルとセーバルの関連に気づいている。


====引用ここから====
6章エピローグ
フェネック「そういえば、なんでサーバルはパーク・セントラルを見たことがあるんだい?」
カラカル「あー、この子、一回大ケガして、管理センターにある『けもの病院』で治療を受けてたことがあるのよ」
サーバル「うん、その時、『けもの病院』の窓からパーク・セントラルやけものキャッスルを見てたんだ。うふふ、すっごくキラキラして、みんな楽しそうで~」
フェネック「そっか、なるほどなるほど……。それで憧れも強いってわけだねー」

7章6話
フェネック「あはは、そうそうせっかくの機会だしね。んー、そういえばさ、前、けもの病院に入院してたって言ってたけど……」
中略
フェネック「うん、私もけもの病院に入院してたからね。この前の話を聞いて確信したけど、アニマルガールになる前のサーバルの事も見たことがあるよー。やー……それにしても“あの時”は本当大変だったよね。“奇跡”が起きなかったら、どうなってたか……」
サーバル「あの時……? 奇跡……?」
フェネック「ありゃ? ……ええっと、だって、サーバルもあの時……」

7章13話
フェネック「(やー、私だけ映画出演したらアライさんが悔しがっちゃうからなー。ま、聞きたかった話も聞けたしねー)」
フェネック「(…………。考えをまとめたら、後でサーバルやギンギツネに確かめるかなー)」

7章エピローグ
フェネック「で、サーバルはセーバルに何を奪われたか、わかったかなー?」
サーバル「え? あぁー、そういえばホートクチホーでも言ってたよね。でも、わかんないよ。フェネックは何かわかったの?」
フェネック「うん。ただの予想だったけど、やっぱりサーバルもあの“奇跡”を体験してたって確かめられたからね」
中略
ギンギツネ「パーク・セントラルがセーバルに襲撃される前、オイナリサマは、けもの病院のけものたちに呼びかけを行った。その呼びかけに応じて、助け合って逃げ出そうとしたけもの達は、みんな奇跡の回復を起こしたのよ。それがおそらくは、“けもハーモニー”の力」
フェネック「その中でも、一番大ケガをしていたサーバルが皆の先頭に立って助けようとしていたってわけ。あの時のサーバルは“特別”だった気がするね。思うに、あの時の“特別”はサーバルの中に宿ったままになってたんだ。サーバルは感受性が強いからかな」
ギンギツネ「ともかく、セーバルが奪ったのは、きっとそのサーバルの“特別”な力に違いないわ」
フェネック「オイナリサマは今、パーク・セントラルでセルリアンの親玉――女王ってヤツかな、これを結界で身動きが取れないようにしてる。今は色んな状況が重なり合って、お互いの力がきっ抗した状態になってるけど…… セーバルはサーバルから奪ったハーモニーを使って明らかに“何かをしようとしている” ……多分、女王の命令を受けて、きっ抗状態を崩すための何か――」
ギンギツネ「あるいは、もっと凄い何か、をね……。でも……セーバルは女王の意志に対抗しようとしている様子でもあったけど……」
フェネック「なんにせよ、何とかしてハーモニーを返してもらわないとねー」
====引用ここまで====


「サーバルはセーバルに何を奪われたのか」という問題に対する答えをフェネックが述べるのは7章エピローグだが、おそらく6章エピローグの時点で既に予想がついているのだろう。
7章6話、フェネックがサーバルたちと合流した直後の段階で、サーバルに対して当時のことを思い出すように促して、必要な情報を積極的に聞き出そうとしている(7章13話「聞きたかった話も聞けたしねー」)ことから、この時点では既に自らの仮説を検証する段階に入っているように見える。
加えて、フェネック自身もまた“奇跡”の体験者であり、その時のサーバルの姿を見ている。このことを思い出した、あるいは、セーバルのことと繋がったのが、6章エピローグの「なるほどなるほど」の台詞だろう。



以下余談

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10^(p-1)=1 mod p^2

戒め
2017/01/10 03:00 修正

A045616  Primes p such that 10^(p-1) == 1 (mod p^2)
コメントに"Primes p such that the decimal fraction 1/p has same period length as 1/p^2, i.e., the multiplicative order of 10 modulo p is the same as the multiplicative order of 10 modulo p^2"という記述があるが、これは嘘ではないのかと思った。
「10^(p-1)=1 mod p^2」から言えるのは「(その乗法群における)10の位数はp-1の約数」だけであり、フェルマーの小定理(10^(p-1)=1 mod p)と合わせても、mod pでの位数とmod p^2での位数が必ず一致するとは言えない気がしたからだ。

もちろん実際には必ず一致することが容易に示せる。
まずはより一般化した形で次の命題を示そう。
命題
pを素数、aをpと互いに素な整数とする。
aのmod p^kでの位数とmod p^(k+1)での位数が異なれば、後者はpの倍数である。
証明
mod p^kにおけるaの位数をdとおく。a^d=n*p^(k+1)+m*p^k+1と書けるが、mod p^(k+1)でのaの位数はdではないのでm≠0 mod pである。
mod p^(k+1)におけるaの位数は明らかにdの倍数であり、(a^d)^e=n'*p^(k+1)+em*p^k+1となることが具体的に計算する事により示せるので、これがmod p^(k+1)で1となるためにはe=0 mod pが必要。
証明終わり
a=10、k=1としてこの命題の対偶を考えると「mod p^2における10の位数がpの倍数でなければ、mod pとmod p^2で10の位数は等しい」であり、実際10^(p-1)=1 mod p^2の仮定よりmod p^2における10の位数はpより真に小さいので特にpの倍数ではなく、最初の主張が導かれる。

こういう自明なことを思いつけないのは本当に時間の無駄なのでよくない

けもフレ(01/15追記)

ちょっと長くなるけれど、まずアプリの関連箇所の引用
なお、文章は適宜省略している

====引用ここから====

8章12話
ギンギツネ「セーバルが持つ“特別”はオイナリサマの呼びかけがキッカケでサーバルに宿ってたものよね? 同じ守護けものである、あなたたちの力なら取り返すことができるんじゃないかしら……?」
ライト「ま、確かに可能だよ。でも……セーバルは“特別”のおかげで、本来セルリアンが持つはずの無い自我を持っている。それがどういうことか、分かる?」
サーバル「セーバルから、“特別”を取り上げると…… どうなっちゃうの……?」
レフティ「おそらく、セーバルは消滅する、だろうね」
サーバル「……! よし、じゃあ“特別”を取り返すプランは無しね!」
フェネック「サーバル、世界の危機なんだよ? もう少しよく考えた方が良いと思うなー」
サーバル「だ、だって、セーバルが消えちゃうんだよ!?」
ギンギツネ「それどころじゃないのよ! 究極のセルハーモニーを起こされたらみんな終わりなのよ!」
フェネック「全ての輝きが奪われたら、どうなると思う? こうして話して笑いあうことはできなくなるし、吹く風も風景も“何もないもの”になっちゃうんだよ。私はね、サーバル。パークでアライさんや皆と馬鹿なことして面白おかしく過ごすのが大好き。絶対に失いたくないなー」

8章エピローグ
ライト「セーバルは……そっか、もうパーク・セントラルに向かっちゃったんだな」
フェネック「全ての音叉も揃ってしまった今、早くセーバルから“特別”を取り返さなきゃねー。その上で、けもハーモニーを使ってセルリアンの女王を倒す。ね、ギンギツネ」
ギンギツネ「……そのことだけど。私たちは、セーバルをどうするか、サーバルの決断に任せることにしたわ」
フェネック「やー…………ほんとに? でも、セーバルは最後に女王に“特別”を届けるためにパーク・セントラルへ向かってるんだよね? それは、つまり……。まあ、それはいいか……。それで、サーバルはどうするつもりなんだい?」
サーバル「まだ、分からないよ……」

9章9話
アライさん「サーバルはセーバルの“特別”を取り返さない、という選択をするかもしれないのだ」
フェネック「あー…………。まあ、トワが一緒にいるからねー。ギンギツネはトワとサーバルのキズナが起こす奇跡を信じたんだ。私もその気持ちは少し分かるっていうか……。でも……サーバルが取り返さなくてもきっとセーバルの運命は変わらない。それなら…………。やー、なんで私、こんなことグチグチ考えちゃうかなー。あはは、不思議だよねー」
アライさん「フェネックはジャパリパークが大好きなのだ。でも、トワたちも大好きなのだ。だから、グチグチ考えるのも不思議ではないのだ。ともかく――――心配は無用なのだ、フェネック。どんな大変なことになったって、アライさんが絶対に全部まるごとなんとかしてやるのだ。 だから、今は迷わずアライさんについてくるのだー!!」

====引用ここまで====

以上、セーバルの処遇に対してフェネックが意見を述べている箇所を引用した。
この3箇所を続けて読むことで、どうやら俺は8章エピローグのフェネックの台詞、「でも、セーバルは最後に女王に“特別”を届けるためにパーク・セントラルへ向かってるんだよね? それは、つまり……。まあ、それはいいか……」の部分で、結局言うのをやめた「つまり……」に続く台詞を誤解していたことがわかった。
てっきり俺は「8章12話と同様の問答を繰り返すだけになるので説得を諦めた」ものだと思っていたのだが、実はそうではなく、「フェネック自身が持つ、説得のための最後のカードを切らずに、サーバルを信じることに決めた」というものだったのだ。
フェネックが切らなかったカードが何だったのかは9章9話で明かされている。「でも……サーバルが取り返さなくてもきっとセーバルの運命は変わらない。それなら…………」という部分だ。少なくともサーバルはこのことを理解していないだろうし、説得するに足るかはさておき、提示することには十分意味のある知見であるように思える。なぜフェネックはこのカードを切らなかったのか。
9章9話に「ギンギツネはトワとサーバルのキズナが起こす奇跡を信じたんだ。私もその気持ちは少し分かるっていうか……」とあるが、それは理由の半分に過ぎないと思う。もう半分はフェネックの優しさなのだ。つまり「どのみちセーバルは死ぬ」という事実をサーバルの眼前に突きつけるのをためらったのだ。
ここまでを踏まえた上で9章9話のシーンを再考してみると、今までは「サーバルを信じたという自分の選択が正しかったのかと悩んでいる場面」だと思っていたこの場面も、「"取りうる最善の行動を取らずに"サーバルを信じたという自分の選択が正しかったのかと悩んでいる場面」だったということに気づく。そして、「全てが決まってしまった後で、みんながいる場では切らなかったカードをアライさんにだけ見せる/見せてしまうフェネック」という図となるわけだ。


続いて、関連した別の話題
====引用ここから====
8章13話
フェネック「絶対に“特別”を取り返した方がいいって、絶対にさー。絶対に絶対に絶対に絶対に絶対にー」
サーバル「ううう……フェネックがずーっと耳元で洗脳してくるぅ~~」
====引用ここまで====
「この場面について、ニコ動では『フェネックに余裕がなくなってきてなりふり構わなくなってきた』っていう見方が大勢だけど、俺は全く逆の意見を持ってる。直前の8章12話でのサーバルの判断があまりに即決すぎることで逆に、自分がうまく立ち回ればまだサーバルを説得することは可能だとフェネックは楽観的に思っていて、だから単にじゃれてるだけだと思う」
と以前述べていたのだが、このことも上で述べたことで補強できる。
8章12話でのやりとり以降なので、この時点ではすでにフェネックはカードを手に入れており、それゆえに余裕があったと思えるからだ。


(以下2018/01/13追記)

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hide(ハイド)

Author:hide(ハイド)

○やりこみとか

DQMキャラバンハートRTA
3:57:15

(11年5月21日)

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低レベルボス攻略

(14年5月6日)

ぱるメロ
旧曲10780pts %表
ツアー3628630
(12年3月~14年9月)

ポケモン不思議のダンジョン
赤の救助隊
RTA 2:49:59

(14年12月5日)

ポケモン不思議のダンジョン
赤の救助隊
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(15年3月9日)

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