4-4 イシスの巨大建造物
次の日、さっそくリチャードさんの店に行ってみた。
「いらっしゃいま……ああ、リクさんとアキさんですか。なにか買われますか?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど……」
「ところで、あの、この上まだお願いするのが無礼だと思うんですが、あなた方の強さを見込んで頼みがあります」
「頼み?何んですか?」
「ええ。ここから西にはずっと広大な砂漠が広がっているんですが――」
世界地図を取り出し、それを見ながら話を聞く。
「その砂漠の真中にイシスという国があるそうで――」
この世界の地形が僕らの世界に近いのは以前確認した通り。
それで、ロマリアから今までの旅は大体ヨーロッパをさまよっていて、このアッサラームはサウジアラビアの辺りか。
そうすると、西にある砂漠はサハラ砂漠で、イシスはエジプトだろうか。いや、エジプトよりも西かな?
「それで、なんでもその国の北にある巨大建造物に、すごいお宝があるらしいんです」
砂漠の真ん中の巨大建造物ってピラミッド?
「それで、私たちに何をして欲しいの?」
「はい、できることなら一緒にイシスへ行って頂けないかと……」
「ふ~ん。いいよね、姉さん?」
「いいんじゃないの」
「ありがとうございます。では、私はここでの商売を終えて、そうですね……半月後ぐらいにここを出ようと思いますが、それでよろしいですか?」
「ぼくはいいけど、姉さんは?」
「……。半月も一所に留まるのは時間の無駄じゃない?」
「いいじゃん。これも人助けだし」
「ねえ。私たちの目的は『バラモスを倒すこと』で、『たくさん人助けをすること』じゃないのよ」
「いいの、いいの。別に人助けするのは悪いことじゃないんだし」
「時間の無駄よ。1日や2日じゃなくて、半月よ」
いちいち返答するのが煩わしくなったので、無視してリチャードさんと話をつける。
「いいですよ。出発の頃、また声をかけてください。僕らはそこの宿屋をとってるんで」
「分かりました。ではまた」
このおかげで、僕ら―じゃなくて、僕は半月の間、花見だの何だので遊び呆けることができた。
姉さんはずっと機嫌が悪かったけれど。
目次 次
「いらっしゃいま……ああ、リクさんとアキさんですか。なにか買われますか?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど……」
「ところで、あの、この上まだお願いするのが無礼だと思うんですが、あなた方の強さを見込んで頼みがあります」
「頼み?何んですか?」
「ええ。ここから西にはずっと広大な砂漠が広がっているんですが――」
世界地図を取り出し、それを見ながら話を聞く。
「その砂漠の真中にイシスという国があるそうで――」
この世界の地形が僕らの世界に近いのは以前確認した通り。
それで、ロマリアから今までの旅は大体ヨーロッパをさまよっていて、このアッサラームはサウジアラビアの辺りか。
そうすると、西にある砂漠はサハラ砂漠で、イシスはエジプトだろうか。いや、エジプトよりも西かな?
「それで、なんでもその国の北にある巨大建造物に、すごいお宝があるらしいんです」
砂漠の真ん中の巨大建造物ってピラミッド?
「それで、私たちに何をして欲しいの?」
「はい、できることなら一緒にイシスへ行って頂けないかと……」
「ふ~ん。いいよね、姉さん?」
「いいんじゃないの」
「ありがとうございます。では、私はここでの商売を終えて、そうですね……半月後ぐらいにここを出ようと思いますが、それでよろしいですか?」
「ぼくはいいけど、姉さんは?」
「……。半月も一所に留まるのは時間の無駄じゃない?」
「いいじゃん。これも人助けだし」
「ねえ。私たちの目的は『バラモスを倒すこと』で、『たくさん人助けをすること』じゃないのよ」
「いいの、いいの。別に人助けするのは悪いことじゃないんだし」
「時間の無駄よ。1日や2日じゃなくて、半月よ」
いちいち返答するのが煩わしくなったので、無視してリチャードさんと話をつける。
「いいですよ。出発の頃、また声をかけてください。僕らはそこの宿屋をとってるんで」
「分かりました。ではまた」
このおかげで、僕ら―じゃなくて、僕は半月の間、花見だの何だので遊び呆けることができた。
姉さんはずっと機嫌が悪かったけれど。
目次 次
テーマ : 自作小説(二次創作) - ジャンル : 小説・文学
4-3 アッサラーム
道中、マミーとかミイラ男とかの魔物も出てきたけれど、この辺の魔物相手には苦戦もしない。
迷子になった人の案内なので少し心配したけれど、町が夜でもすごい賑わっていたせいもあって、特に迷うことなく到着した。
リチャードさんと共に行動して4日目だった。
「どうもありがとうございました。私は商隊と合流して、しばらくこの町で商売をしようと思います。買い物はうちの店でお願いしますね」
町に着いて、商隊の馬車を見つけたリチャードさんが別れていく。
「ここがアッサラームかぁ~。すごい賑やかな町だね」
今までの町とは活気が違う。さっきの商隊の人達が商売をしているからというのもあるんだろうけど、町中には多くの店があった。
姉さんが今日の宿を探している間、薬草やキメラの翼などの消耗品の買出しのため、道具屋に寄った。
「おお!わたしの友達!お待ちしておりました。売っているものを見ますか?」
僕はこの人とは会った事は無いと思うのだけれど……。リチャードさんの話が広がってるんだろうか?
「とりあえず薬草を」
「おお!おめがたかい!64ゴールドですがお買いになりますよね?」
「はい?」
「64ゴールドですがお買いになりますよね?」
薬草は今までどこの町でも1枚8Gだった。だから、64Gなんてどう考えてもぼったくりだ。
「よくないです」
「おお、お客さん買い物上手。わたし参ってしまいます。では32ゴールドにいたしましょう。これならいいでしょう?」
どうやら、この町での買い物は『値切り』が重要な交渉になりそうだ。
「もう少し安く…」
「おお、これ以上まけるとわたし大損します!でもあなた友達!では16ゴールドにいたしましょう。これならいいでしょう?」
言い値の4分の1まで値切ったけれど、まだ相場の倍の値段だ。
それなのに何が『大損します』だ。
「もう一声」
「おお、あなたひどい人!わたしに首吊れといいますか?分かりました。では8ゴールドにいたしましょう。これならいいでしょう?」
首を吊るなんて大げさな。
ただ、問題はここからだ。もし、8Gより安くできるなら少し得になるんだけど、どだろうか?
「あと1G」
「そうですか。残念です。またきっと来てくださいね。」
「あ、ちょっと待ってください。分かりました。8Gで買います」
このあと、キメラの翼や毒消し草を買うのにも、同じように少しずつ値切らないといけなかった。
他の店でも試してみたけど、どの店も最初は流通価格の数倍の値段を吹っ掛けてきた。
値切れば安くしてくれるけれど、決して流通価格を下回る値段では売ってくれない。
1日かけて、この町の商人達の法則を発見した。
夜、姉さんがとった宿で、この話をすると
「あんた、馬鹿じゃない?薬草なんかリチャードさんとこ行けばタダで分けてくれたかもしれないのに」
と言われた。確かにそれもそうかもしれない。
明日は今日行かなかった店―リチャードさんの店とか―に行ってみようと思いながら、久しぶりのベッドでぐっすり眠った。
目次 次
迷子になった人の案内なので少し心配したけれど、町が夜でもすごい賑わっていたせいもあって、特に迷うことなく到着した。
リチャードさんと共に行動して4日目だった。
「どうもありがとうございました。私は商隊と合流して、しばらくこの町で商売をしようと思います。買い物はうちの店でお願いしますね」
町に着いて、商隊の馬車を見つけたリチャードさんが別れていく。
「ここがアッサラームかぁ~。すごい賑やかな町だね」
今までの町とは活気が違う。さっきの商隊の人達が商売をしているからというのもあるんだろうけど、町中には多くの店があった。
姉さんが今日の宿を探している間、薬草やキメラの翼などの消耗品の買出しのため、道具屋に寄った。
「おお!わたしの友達!お待ちしておりました。売っているものを見ますか?」
僕はこの人とは会った事は無いと思うのだけれど……。リチャードさんの話が広がってるんだろうか?
「とりあえず薬草を」
「おお!おめがたかい!64ゴールドですがお買いになりますよね?」
「はい?」
「64ゴールドですがお買いになりますよね?」
薬草は今までどこの町でも1枚8Gだった。だから、64Gなんてどう考えてもぼったくりだ。
「よくないです」
「おお、お客さん買い物上手。わたし参ってしまいます。では32ゴールドにいたしましょう。これならいいでしょう?」
どうやら、この町での買い物は『値切り』が重要な交渉になりそうだ。
「もう少し安く…」
「おお、これ以上まけるとわたし大損します!でもあなた友達!では16ゴールドにいたしましょう。これならいいでしょう?」
言い値の4分の1まで値切ったけれど、まだ相場の倍の値段だ。
それなのに何が『大損します』だ。
「もう一声」
「おお、あなたひどい人!わたしに首吊れといいますか?分かりました。では8ゴールドにいたしましょう。これならいいでしょう?」
首を吊るなんて大げさな。
ただ、問題はここからだ。もし、8Gより安くできるなら少し得になるんだけど、どだろうか?
「あと1G」
「そうですか。残念です。またきっと来てくださいね。」
「あ、ちょっと待ってください。分かりました。8Gで買います」
このあと、キメラの翼や毒消し草を買うのにも、同じように少しずつ値切らないといけなかった。
他の店でも試してみたけど、どの店も最初は流通価格の数倍の値段を吹っ掛けてきた。
値切れば安くしてくれるけれど、決して流通価格を下回る値段では売ってくれない。
1日かけて、この町の商人達の法則を発見した。
夜、姉さんがとった宿で、この話をすると
「あんた、馬鹿じゃない?薬草なんかリチャードさんとこ行けばタダで分けてくれたかもしれないのに」
と言われた。確かにそれもそうかもしれない。
明日は今日行かなかった店―リチャードさんの店とか―に行ってみようと思いながら、久しぶりのベッドでぐっすり眠った。
目次 次
テーマ : 自作小説(二次創作) - ジャンル : 小説・文学
4-2 商隊
これからどうしようかと考えるのと、暗くなってきたのとで、今日はこの辺で野宿しようということになった。
「で、どするの?」
「さぁ~。姉さんはどうするつもり?」
「せっかくここまで来たんだから、もうちょっとこの辺を歩いてみましょ」
「了解。じゃ、おやすみ~」
そう言って、横になってどれくらいの時間が経ったんだろうか。小一時間ほどだろうか、突然姉さんに起こされた。
「ねえ、リク。向こうの方から人の悲鳴が聞こえてきたんだけど……」
「だから、何だって言うんだよ」
眠っていたところを起こされて、ついこんな事を言ったら
「『何だって』じゃないでしょ。助けに行くに決まってるじゃない。早く起きなさいよ」
と、ものすごく怒られた。
仕方なく姉さんについて、声が聞こえたらしい方へ歩く。
するとそこには、ほとんど丸腰で魔物と戦う―というより弄(もてあそ)ばれる男の姿があった。
相手は火炎ムカデと暴れ猿。僕らの敵ではない。
魔物達を倒して、男の人を助ける。
「大丈夫ですか?」
「ええ、ありがとうございます」
「ところで、戦いには不慣れなようですし、武器も持たずにどうしてこんなところにいるんですか?」
「実はですね、私(わたくし)迷子になりまして……」
「迷子……」
「ええ、私商人で、仲間とともにアッサラームの町へ向けて商隊(キャラバン)を組んで旅をしていたんですが、途中ではぐれてしまいまして……」
「ところで、そのアッサラームって町、どこにあるんですか?」
「多分、ここからだと南西の方角になるでしょうか」
「やっぱり、こっちの方にも町はあったんだ」
姉さんが独り言を言う。
「その商隊の人達が、あなたを探しに来ると言うことは?」
「ないと思いますよ。例え魔物に襲われて死者がでても、残りの者だけで町を目指す、というのがルールですから」
「そうですか。それで、あなたはこれからどうするつもりなんですか?」
「アッサラームの町を目指したいんですが…」
「自分の力では到底無理だ、と」
「そうなんです。そこで、命を助けていただいた上に、こんな頼みをするのは……」
「つまり、アッサラームまで、護衛みたいなことをして欲しい訳ですね」
この人に喋らせていてはラチがあかないので僕が言う。
「そうなんです。お願いできませんか?もちろんタダでとは言いません」
「ちょっと待ってください」
こういうことは姉さんと相談した方がいい。
「どうする?」
「いいんじゃないの。アッサラームに行けるんだから」
予想外の即答。ま、どうでもいいけど。
商人の方へ向き直って答える。
「いいですよ。あなたがアッサラームまで道案内をしてくれるのなら。お金もいりません」
「ありがとうございます。あ、自己紹介がまだでしたね。私リチャードと言います」
「僕はリク。こっちが姉のあきなです」
「しばらくはよろしくお願いします。わたしのことはアキと呼んでください」
目次 次
「で、どするの?」
「さぁ~。姉さんはどうするつもり?」
「せっかくここまで来たんだから、もうちょっとこの辺を歩いてみましょ」
「了解。じゃ、おやすみ~」
そう言って、横になってどれくらいの時間が経ったんだろうか。小一時間ほどだろうか、突然姉さんに起こされた。
「ねえ、リク。向こうの方から人の悲鳴が聞こえてきたんだけど……」
「だから、何だって言うんだよ」
眠っていたところを起こされて、ついこんな事を言ったら
「『何だって』じゃないでしょ。助けに行くに決まってるじゃない。早く起きなさいよ」
と、ものすごく怒られた。
仕方なく姉さんについて、声が聞こえたらしい方へ歩く。
するとそこには、ほとんど丸腰で魔物と戦う―というより弄(もてあそ)ばれる男の姿があった。
相手は火炎ムカデと暴れ猿。僕らの敵ではない。
魔物達を倒して、男の人を助ける。
「大丈夫ですか?」
「ええ、ありがとうございます」
「ところで、戦いには不慣れなようですし、武器も持たずにどうしてこんなところにいるんですか?」
「実はですね、私(わたくし)迷子になりまして……」
「迷子……」
「ええ、私商人で、仲間とともにアッサラームの町へ向けて商隊(キャラバン)を組んで旅をしていたんですが、途中ではぐれてしまいまして……」
「ところで、そのアッサラームって町、どこにあるんですか?」
「多分、ここからだと南西の方角になるでしょうか」
「やっぱり、こっちの方にも町はあったんだ」
姉さんが独り言を言う。
「その商隊の人達が、あなたを探しに来ると言うことは?」
「ないと思いますよ。例え魔物に襲われて死者がでても、残りの者だけで町を目指す、というのがルールですから」
「そうですか。それで、あなたはこれからどうするつもりなんですか?」
「アッサラームの町を目指したいんですが…」
「自分の力では到底無理だ、と」
「そうなんです。そこで、命を助けていただいた上に、こんな頼みをするのは……」
「つまり、アッサラームまで、護衛みたいなことをして欲しい訳ですね」
この人に喋らせていてはラチがあかないので僕が言う。
「そうなんです。お願いできませんか?もちろんタダでとは言いません」
「ちょっと待ってください」
こういうことは姉さんと相談した方がいい。
「どうする?」
「いいんじゃないの。アッサラームに行けるんだから」
予想外の即答。ま、どうでもいいけど。
商人の方へ向き直って答える。
「いいですよ。あなたがアッサラームまで道案内をしてくれるのなら。お金もいりません」
「ありがとうございます。あ、自己紹介がまだでしたね。私リチャードと言います」
「僕はリク。こっちが姉のあきなです」
「しばらくはよろしくお願いします。わたしのことはアキと呼んでください」
目次 次
テーマ : 自作小説(二次創作) - ジャンル : 小説・文学
祝・名前決定!!!
リクの姉の名前が決定しました。
その名も「あきな」
………。
ちゃんと真面目に考えました。
DQ2のムーンブルクの王女の名前のひとつからもらいました。
一応現実世界の人間なので、ありえそうな名前をつけないといけないので難しかったです。
弟の友達に「あきな」というのがいて、それがムーンブルクの王女の名前だったので、それをつけました。
…といっても、あまり名前を呼ばれる機会が無いんですけどね。
その名も「あきな」
………。
ちゃんと真面目に考えました。
DQ2のムーンブルクの王女の名前のひとつからもらいました。
一応現実世界の人間なので、ありえそうな名前をつけないといけないので難しかったです。
弟の友達に「あきな」というのがいて、それがムーンブルクの王女の名前だったので、それをつけました。
…といっても、あまり名前を呼ばれる機会が無いんですけどね。
4-1 南西へ
ノアニールでの事件を解決し、僕らは次の町を目指していた。
と言っても、実際この先に町があるかどうかは分からない。
カザーブから南に進み、西の関所を目指そうかと思っていたのに、東にも森が広がっていてどこかに続いていそうだと、姉さんが言ったから、迷った末「どちらにしようかな」同然の決め方で東へ行こう、と決めたからだ。
山道を歩きながら周りを見回す。
山は今、花見にちょうどいいくらいの時期だ。
ピンクの花がそこら中に咲いている。
そのピンクの花が桜なのか、桃なのか、それともぜんぜん違う花なのか、いまいち自信が持てない。
僕らがこの世界に来たのは真冬のことだったから、かれこれもう3ヶ月も経つことになる。
今までの3ヶ月近い冒険を振り返ってみると、僕らの旅は結構行き当たりばったりだったのかも知れない。
この事を姉さんに言ってみると
「今更何言ってるの?それに、無計画なのはあんたが『考えても』どうのこうの言ってるせいも多分にあるじゃない」
何ていうすごい言われようをした。
だけど結局の所、姉さんが率先して計画を立てようとはしない訳なんだから、僕だけが悪いんじゃないと思うんだけど。
カザーブを出て10日後、森を抜け広い草原に出た。
ただそうなるとちょっと困ったことになる。
確かに森の中に比べれば、草原の方が遥かに歩きやすい。
だけど、今までは海に挟まれていたから一本道だったのに、これからは何の道標(みちしるべ)もない所を進まないといけないからだ。
基本的にこの世界には道路というものがない。
町の中の道はきれいに舗装されているけれど、町の外には「舗装された」どころか道らしきものすら見当たらない。人が通ったあとは、よく見れば分かるのだけれど。
だから、この先に町があるかどうかすら定かでないのに、広い場所に出てしまうとかなり困る。
この前のエルフの村を探す時だって、「村がある」っていうのが分かっていても見つけるのには相当な時間がかかったんだし。
目次 次
と言っても、実際この先に町があるかどうかは分からない。
カザーブから南に進み、西の関所を目指そうかと思っていたのに、東にも森が広がっていてどこかに続いていそうだと、姉さんが言ったから、迷った末「どちらにしようかな」同然の決め方で東へ行こう、と決めたからだ。
山道を歩きながら周りを見回す。
山は今、花見にちょうどいいくらいの時期だ。
ピンクの花がそこら中に咲いている。
そのピンクの花が桜なのか、桃なのか、それともぜんぜん違う花なのか、いまいち自信が持てない。
僕らがこの世界に来たのは真冬のことだったから、かれこれもう3ヶ月も経つことになる。
今までの3ヶ月近い冒険を振り返ってみると、僕らの旅は結構行き当たりばったりだったのかも知れない。
この事を姉さんに言ってみると
「今更何言ってるの?それに、無計画なのはあんたが『考えても』どうのこうの言ってるせいも多分にあるじゃない」
何ていうすごい言われようをした。
だけど結局の所、姉さんが率先して計画を立てようとはしない訳なんだから、僕だけが悪いんじゃないと思うんだけど。
カザーブを出て10日後、森を抜け広い草原に出た。
ただそうなるとちょっと困ったことになる。
確かに森の中に比べれば、草原の方が遥かに歩きやすい。
だけど、今までは海に挟まれていたから一本道だったのに、これからは何の道標(みちしるべ)もない所を進まないといけないからだ。
基本的にこの世界には道路というものがない。
町の中の道はきれいに舗装されているけれど、町の外には「舗装された」どころか道らしきものすら見当たらない。人が通ったあとは、よく見れば分かるのだけれど。
だから、この先に町があるかどうかすら定かでないのに、広い場所に出てしまうとかなり困る。
この前のエルフの村を探す時だって、「村がある」っていうのが分かっていても見つけるのには相当な時間がかかったんだし。
目次 次
テーマ : 自作小説(二次創作) - ジャンル : 小説・文学